碁石は、黒石も白石も、形や大きさは同じですが、囲碁のルールのもとに碁盤上に並んでいくと、それぞれの石のひとまとまりに「強い」とか「弱い」という属性が備わってきます。
これが囲碁のおもしろいところの一つですね。
囲碁をはじめて間もないころは、なかなか分かりづらいところではありますが、囲碁にはこんなおもしろい一面があるということを知っていただければ、まずは十分です。
石を1手づつ交代で打つだけなのに、どうして相手の石をとったり地をとったりすることができるのか?この疑問へのヒントにもなると思います。
強い石とは
正確な定義を書くのはなかなか難しいですが、ここでは、「強い石」とは、
- 活きている石
- 活きているわけではないが、その時点で相手に取られる心配のない石
としておきます。
まず、活きている石について、これは文句なく強い石です。活きている石というのは、完全に活きている石と、交互に打つ限り(手抜きしなければ)事実上活きている石とを含みます。
次に、これがちょっと難しいのですが、活きているわけではないが、その時点で相手に取られる心配のない石も強い石といえます。
こちらの方が、見方がはるかに難しく、棋力によって見え方も異なってくるようなものです。
強い石は、後述するように攻めるときに活用できるものですが、強い石であることを認識できないと、そのようにもいきません。
弱い石とは
ここでは、「弱い石」とは、活きていない石と考えていただいてよいと思います。
根拠に乏しく、活きるために何手もかかるような石のひとまとまりは、いうまでもなく弱い石です。
スポンサーリンク石の強弱を利用した石運びのコツ
自分の強い石を利用して攻める
この記事では、攻めるときの石運びのコツの話を書きます。
石の強弱を利用し、具体的には自分の強い石に相手の弱い石を押し付けるように打つことが、攻める時のコツの1つです。
仮にその石が取れなくても、攻めに用いた石の方で得をすることになります。
図1
図1は、置き碁の入門書でよく解説されている攻め方ですが、これが良い例です。
□の黒1子は右辺の白石2子に挟まれていて弱い石、右上の三角の黒い石は今の時点で活きているわけではありませんが、隅で根拠を作りやすく、目下強い石と見られます。
黒は弱い石から強い石に向かって白石を押し付けるように打つ、黒1から始めます。
以下、
図2
図2のように進み、白18と打って活きることになります。
攻めていた白石を、最後はとることができませんでした。しかしこれで黒は大満足なのです。
白は活きたことは活きましたが白地は数目、対して右下は大きな地模様になりました。白石1子も孤立しています。このままそっくり黒地にならなくてもこれで十分です。
手順の途中で黒7にも注目してください。この手によって、やはり右上の△の2子の方に向かって、白石を押し付けるように打っていることがわかります。
強い石を活用する好例かと思います。
強い石が弱い石になるところを見極めるて手を引く
活きている石は終局まで強い石です。(もちろん手抜きして死に石になるようなケースは除きます。)
しかし、石の強弱は普通、黒石のひとまとまりと白石のひとまとまりとが並んだときの相対的な関係で決まります。
ここが囲碁のおもしろいところでもありますし、難しいところでもあります。
図1の△印の黒石は、目下強い石といえます。現時点ですぐに相手にとられることはないでしょう。
□印の白石に対して、黒1と「強い石に押し付けるように」打ち、白2に黒3と攻めを継続します。
このとき、黒1, 3の左側に新しい模様ができつつあるのが見てとれると思います。
このように、弱い石を攻めながら新しい模様や、場合によっては新しい地を獲得したりするように打つことがコツです。
冒頭に書いた、「石を1手づつ交代で打つだけなのに、どうして相手の石をとったり地をとったりすることができるのか?」という疑問に対する、一つのヒントになると思います。
しかし、注意点があります。△印の黒石は、活きている石ではありませんので、次図:
この図のような状態になるまで放っておいてはいけません。
これは、△印の黒い石が弱い石どころか、取られた石になってしまっています。
目下強い石を、いつまでも強い石だと思い込んで突き進むと、この黒石のひとまとまりのように逆に攻められたり取られたりして、碁を負けにしてしまうことになります。
こうならないように、どこかで△印の石を活き形にする必要があります。
この記事では説明を省略しますが、場合によっては小さく捨てるという打ち方をすることもあるでしょう。
まとめ
- 石の強弱を利用し、具体的には自分の強い石に相手の弱い石を押し付けるように打つことが、攻める時のコツの1つである。
- 目下強い石は、活きていない限り、いずれ弱い石になることがある。活き形にしたり、小さく捨てるなど、攻守の切り替えに注意する必要がある。